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第3回 特別講演&シンポジウム「地方高齢者の生活支援と気ばらし療法(DT)の役割」

2003年8月9日(土) 場所:国立オリンピック記念青少年総合センター


「高齢者一人ひとりが、その人らしい暮らしをしていくためには何が必要なのか」 高齢者のなかでも、とくに認知症高齢者に対する療法として今後重要な役割を担うであろう気ばらし療法(DT:ダイバーショナルセラピー)についてのシンポジウムを開催いたしました。特別講演として、日本ダイバージョナルセラピー協会の専務理事である芹澤隆子氏を、さらにパネリストとして高齢者施設等の現場でご活躍なさっている3名をお迎えし、高齢者ケアの現状と今後の展望について発表がありました。

※気ばらし療法(Diversional Therapy=DT)とは
クライアント(高齢者)個人の独自性と個性を認め、生きることの意味を取り戻し維持するための機会を持てるようにサポートし、自己実現をしたいという要求に応えるため、個人個人へのアセスメントに基づいて、各クライアント(高齢者)のためのレクリエーション、レジャーからライフスタイル全般にわたって、そのプログラムや環境を提供する介護の思考と手法である。 (「ダイバージョナルセラピー入門」日本ダイバージョナルセラピー協会編より)



当日のプログラム

特別講演

「一人ひとりが主人公のケアとDTの役割」
講師:芹澤隆子氏
NPO法人 日本ダイバージョナルセラピー協会 専務理事(大阪)
(有)ウエル・プラネット 代表取締役
オーストラリア・クイーンズ州ダイバージョナルセラピー協会 準会員
健康福祉情報研究所 所長
・日豪の掛け橋として、高齢者介護の日本におけるDTの普及活動に貢献。「密着介護24時」「健康トップニュース」等の長期連載コラム、また認知症病棟24時間密着取材記事等の各誌で活躍中。


主な内容

「認知症高齢者の生活支援と気ばらし療法(DT)の役割」

「ダイバージョナルセラピーに期待すること」
発表者:小山 剛氏
高齢者総合ケアセンターこぶし園 総合施設長
東北福祉大学 特任助教授 他
・東北福祉大学卒業後、知的障害児施設・あけぼの学園、重症心身障害施設・高齢者総合ケアセンターこぶし園の主任生活指導員として勤務後、現在に至る


「オーストラリアのDT研修と「こぶし園」特別養護老人ホームでのDTの活動事例」
発表者:田中 光三氏
高齢者総合ケアセンターこぶし園
ダイバーショナルセラピー・スタッフ
・スウェーデンにおける看護・福祉関連の各種専門学校を卒業後、同国内の老人病院、老人ホーム、サービスハウス、ホームヘルパーに従事。2002年8月より高齢者総合ケアセンターこぶし園にて勤務。


「高齢者施設における園芸療法」
発表者:登坂 ユカ氏
いばらき園芸療法研究会 会長 老人保健施設ルーエしもつま 園芸療法講師 他
・東京農大在学時より園芸療法を専修し、同大学院修士課程修了後、アメリカ・高等園芸療法士ボディール・アナヤ氏に師事。現在、園芸療法講師およびスーパーバイザーとして活躍している。


[コメンテーター]
芹澤 隆子氏
NPO法人 日本ダイバージョナルセラピー協会 専務理事(大阪)

[コーディネーター]
渡邉 光子
NPO法人 福祉・住環境人材開発センター理事長

特別講演

「一人ひとりが主人公のケアとDTの役割」芹澤 隆子氏
人間誰しも、何か1つのことに行き詰まった経験があると思います。なかなか前に進めない。自分の思うような行動がとれない。そんなときに、新たな流れをどこか別のところに作って可能性を見つけよう、それがダイバージョン(方向転換)です。認知症の方というのは、自分の人生の最後に詰まっている状態ではないでしょうか。問題行動などで苦しんで行き詰まっている方のハッピーになる別の道を探そう。その方が持っていらっしゃる新しい可能性を引っ張りだそう。それが、ダイバージョナル・セラピー(以下DT)の目的です。

多くの日本の施設の現状は、スタッフたちが身体介護から食事のお世話、おふろと必死で働き回っている。心の中では、お年寄りの話をゆっくり聞いてあげたいと思いつつも、今は忙しいからと対応できない。たとえ対応ができても、それぞれがばらばらで行っているため効果が上がらない。そんな状況ですから、入居者も満足できていません。
しかし、その作業を専門家(ダイバージョナルセラピスト)が一括して行えば、作業が分担され、スタッフの動きは整理されます。ダイバージョナルセラピストは、アセスメントや日常の会話によって、お年寄りの生活歴や価値観を把握し、その人にとって必要な療法、アクティビティを探り、さらに全人的視点に立って、ライフスタイル全般におけるケアの専門家です。お年寄りも1対1でゆっくりと話を聞いてくれ、自分のしたいことをアレンジしてくれる人がいるとわかると、精神的に安定して穏やかな生活を送れるようになります。お昼の間に十分活動する、あるいは寝たきりの方でも心を満足して生活できれば、夜もちゃんと眠れるようになります。すると、徘徊や問題のある行動をする人が大勢いたときは、何人ものスタッフがフル稼働しなければいけなかったのが、スタッフの労働は軽減され、経営者としてはコストを減らすことができるのです。

DTの先進国であるオーストラリアも、日本同様、高齢者介護の予算が問題になっています。ただ、日本と違うのは、オーストラリアでは、「コストを下げるためには介護の質を上げればいい」と言うところです。介護の質を上げるためには、スタッフ1人ひとりの教育を徹底し、専門性を持たせることで効率のよい介護ができる。その専門職のひとつとして、DTを施設におく。このことによって、その施設のコストが下がってくるといいます。というわけで、人件費の問題だけではないのですが、施設の経営者は競ってDTをおくようになり、今ではほとんどの施設にDTさんがいらっしゃいます。

日本にはたくさんの療法があり、専門家がいらっしゃって研究もいっぱいしている。でも、たとえば園芸療法の先生が施設に来られて、「はい、皆さん、集まってやりましょう」と言ったところで、すぐに1人ひとりの心を本当に開くことはできるでしょうか。しかし、「この人たちは農業をやっていたので、きっと野菜づくりの知識を持っています」「でもこの方はマンション暮らしだったので、プランターなどの花づくりの方が好きかもしれない」というふうに、一人ひとりの生活歴、あるいは価値観を把握しているDTがいれば、いま日本にいっぱいある専門分野が、この一人の方のために上手く流れるのではないかと思うんです。

たとえ施設を移っても、どこへ行ってもその人らしい満足な生活が送れる。そして最後には、自分らしく死ねる。福祉の最大で最後の目的はそこだと思っておりますので、自分らしく生きて自分らしく死ねるように、今後も活動を続けさせていただきたいと思います。

シンポジウム

「認知症高齢者の生活支援と気ばらし療法(DT)の役割」

「ダイバージョナルセラピーに期待すること」小山 剛氏
私のところでは何年か前にアクティビティの専任をつくり、ほかのスタッフは介護に専念するという分化をやってみた。ところが、ほかのスタッフがおむつ交換などで忙しいときに、その専任スタッフがアクティビティの準備なんかをしていると、遊んでいると思われる。すると本人もまわりに気を使って、おむつ交換に回ってしまう。本末転倒なんですが、まずはまわりの人に理解してもらわないと、なかなか進まない仕事だと僕は思っています。
また、アクティビティの数は利用者の数だけありますから、その分を用意しなければなりません。ただし、利用者10数人に対してスタッフ一人という現状で、それを行うのは無理。そのためには、コーディネーターとボランティアが絶対必要です。地域社会の中には、いろんな趣味を持ったアクティビティのプロが大勢います。そういう人たちと上手く合体できると、お金もかけないで何とかなっていくのではないかなと考えます。



「オーストラリアのDT研修と「こぶし園」特別養護老人ホームでのDTの活動事例」田中 光三氏
私のところでは何年か前にアクティビティの専任をつくり、ほかのスタッフは介護に専念するという分化をやってみた。ところが、ほかのスタッフがおむつ交換などで忙しいときに、その専任スタッフがアクティビティの準備なんかをしていると、遊んでいると思われる。すると本人もまわりに気を使って、おむつ交換に回ってしまう。本末転倒なんですが、まずはまわりの人に理解してもらわないと、なかなか進まない仕事だと僕は思っています。
また、アクティビティの数は利用者の数だけありますから、その分を用意しなければなりません。ただし、利用者10数人に対してスタッフ一人という現状で、それを行うのは無理。そのためには、コーディネーターとボランティアが絶対必要です。地域社会の中には、いろんな趣味を持ったアクティビティのプロが大勢います。そういう人たちと上手く合体できると、お金もかけないで何とかなっていくのではないかなと考えます。



「高齢者施設における園芸療法」登坂 ユカ氏
楽しいとか嬉しいという気持ちに理由は要りませんよね。楽しいから安心して続けられるし、集中し心にも響く。心が安心するということは、癒されているんです。ですから、何でもいいので楽しいことから始めるといいと思います。その点、園芸はレクリエーションの全国調査などで必ず上位に入るように、遊び、楽しみの一種と認知されているので導入しやすい。「楽しい」から「やりたい」という気持ちを引き出す。お年寄りの心や体からやりたい気持ちがにじみ出てくると、積極的にどんどん参加されて、私なんかいてもいなくても同じような人間になります。 また、園芸はただお花を見て楽しむことから、育てて収穫を楽しむことまで内容が豊富で幅広い。ですから、きちんとアセスメントすることによって、その人に合った活動を探し提供することができるのも、大きな魅力の一つであると思います。




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