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第3回 特別講演&シンポジウム「地方高齢者の生活支援と気ばらし療法(DT)の役割」

2003年6月7日(土) 場所:新宿NSビル


さる4月6日、新宿NSビルにおいて、当NPO法人は「設立記念講演・シンポジウム」を開催いたしました。記念講演として厚生労働省大臣官房長 辻哲夫氏を、またシンポジウムでは福祉・住環境・教育・社会等各分野でご活躍の5名のパネリストお迎えし、会場には約240人の参加者が集われました。


当日のプログラム

特別講演

「高齢者がその人らしく暮らせる住環境に関する施策」
講師:辻 哲夫氏/厚生労働省 官房長


シンポジウム

「高齢者の自立した生活を支える住環境と人材育成」
[パネリスト]
山崎 史郎氏/厚生労働省大臣官房参事官
太田 貞司氏/神奈川県立保健福祉大学教授
大原 一興氏/横浜国立大学大学院助教授
永田久美子氏/高齢者認知症介護研究・研修東京センター主任研究主幹
溝口千恵子氏/(株)高齢者住環境研究所所長/一級建築士

[コーディネーター]
渡邉 光子/NPO法人 福祉・住環境人材開発センター理事長

記念講演

「高齢者の自立は住環境の整備から その人らしく暮らせる住環境」
厚生労働省 大臣官房長 辻 哲夫氏


「高齢者の日常に合わせた住宅」が前提
 介護保険導入以前には、厚生労働省としては特別養護老人ホームの整備が目標でしたが、施設で老後を過ごすのではなく、高齢者が自立した状態で在宅で生活を続けられるようにしようという考え方も出てきました。そういう在宅での生活が続けられるようにホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイの整備を推進。その時、この政策には「住宅」が欠けているという指摘がありました。在宅サービスがあっても、住宅がバリアフリーになっていないと在宅ケアは無理なのです。
 住宅をバリアフリーにするためには、日々の生活をイメージして、トイレや浴室をどうするのか、高齢者の生活に合わせた住宅を考える人が必要です。渡邉理事長は当時からそういう人材を育成することに着手されて、現在に至っています。
 また、そういう身体的な自立だけでなく、真の自立には社会との接点をもち続けることが必要です。デイサービスの送迎の車に乗ったお年よりは、久しぶりに家から出て、知り合いに会えるということで元気が出る。そういう社会とのつながりを作ることが、身体的自立の前提でもあります。
 また、認知症のお年よりは施設に入所すると生活や環境が急変することにより認知症が進むため、認知症のケアは大きな悩みでした。
 小規模な住宅で、社会の中で暮らすことが重要だということから、現在、最前線の特別養護老人ホームや老人保健施設ではユニットケアに取り組んでいます。これは個室を基本に8~10人の単位で共通の空間を作り、グループホームと同じような生活をするシステムです。
 また、昼間はお年よりを地域のグループホームに移し、夜は施設に戻ってもらうなど、さまざまな試みが行われています。入所施設でも、そういう方向転換を始めることを願っています。
 結局、良質なケアとは日常性であり、お年よりにとっていちばんいいのは住み慣れた所なのです。欧米では施設に入居するときには気に入っている写真や置物を個室に持ち込んで、生活の連続性を維持しています。  在宅の場合、外部の支援サービスを支える住宅の在り方が非常に切実な問題です。そこに対応していく人材をどう育てるかが現在の最大の福祉問題のひとつです。人間の生活を大切にする時間と空間を目指す、こういうNPO法人の活動が広がっていくことを願ってやみません。


シンポジウム

「人材育成、連携のシステム作りを」

元気に生活していたのに、自宅で転んで骨折したり、あまりにも環境の異なる施設に入所して認知症が進む高齢者も少なくない。高齢者が安心して暮らすためには安全で居心地のいい居住空間が必要であり、高齢者の生活面から福祉住環境整備にかかわる専門職の養成が急務となっている。そういう人材の育成を目的とするNPO法人「福祉・住環境人材開発センター」(渡邉光子理事長)が設立され、4月6日、新宿NSビルで設立記念講演とシンポジウムが開催された。
福祉の専門家や建築関係者から、高齢者の自立をサポートする住環境とはどういうものか、その実現にはどういう対策やシステムが必要か、具体的な提言が行われた。


専門職の連携システムが必要
【溝口】
まず住環境整備をして、それから本人ができないことをマンパワーで解決するのが本来の姿ではないでしょうか。
住環境整備のキーパーソンはケアマネジャーさんですが、具体的な改修の知識を身につけるより、在宅で生活する利用者と住環境の関係を冷静に見る目が必要。その上で、住宅改修がどうあったらいいかという技術を身につけていただきたい。
住宅改修には利用者の生活にずっとかかわっているホームヘルパーさんなどの協力がないと問題点が見えてきません。どういう形でどういう人材と連携するかというシステムを作ることが必要です。
また、建築者の問題としては、いい業者を育てるためには現場研修が大きな意味をもちます。個別対応への実績を積むことで、高齢化に備えた住宅の新しい視点が見えてくるのです。

施設は「普通」の住宅を目指すべき
認知症の人がなじみのない環境におかれると、混乱や失敗が生じ、睡眠のリズムや食欲が乱れて、自分らしさが消失していきます。一方、なじみのある空間では非常に落ち着き、スムーズに行動でき、体調が整って活力が蘇ります。その人らしさが自然と立ち上がってくる。認知症そのものは病気ですが、認知症に伴う障害の多くは環境によってつくられています。
認知症の介護で重要なのは、関係性が継続的に発展していく環境です。福祉住環境コーディネーターはなじみの環境を継続させていく担い手になっていただきたい。

「なじみのない環境」がバリアに…
【大原】
施設環境については、環境をつくる側とその中で生活をする人とが乖離しているのではないかと思います。最近はやりの施設空間は建築家が造り込みすぎているものが多い。例えば老人ホームを料亭風の造りにするというように「普通」からどんどん離れてしまう。
ケアをする立場、環境をつくる立場から高齢者や認知症の人のための空間とはこうだという思い込みで考えるより、住宅とはこういうものなのだということに立ち戻って考えたほうがいいのでは。
「普通」の住宅というのは造ることはできないけれど、それを目指す姿勢こそ大事だと思います。
住宅改修でも、専門特化された技術よりも総合化してまとめあげていく技術の方が重要です。

地域間のシステムの再構築が必要
【太田】
「ベッドサイドでの支援」から日常生活を支援することが社会福祉の重要な課題になってきました。現在、高齢者が地域で暮らせるグループホームや高齢者住宅をつくれるような仕組みづくりが、日本中で試みられています。
今後は、地域間のシステムの再構築や、自立した人と軽度の障害の人をどう組み合わせるかが課題になるでしょう。自宅と自宅でない在宅と長期ケアの施設の組み合わせをどのようにするか、これは一律ではないと思います。特に寒冷地、過疎地、離島の問題、それから大都市中心部の問題が大きな課題です。

住環境の専門職からサービスが生まれる
【山崎】
住宅改修は要支援の段階から行うのがいいのですが、要介護3以上から利用するというのは改修しなければいけなくなった段階で利用しているということでしょう。逆にいうとまだまだ介護サービスを使いこなせていない状態で、情報提供が必要な段階です。
ケアマネジメントは医療・看護のケアプランと、福祉のケースマネジメントを統合したものですが、住環境が欠落していたのは行政として反省すべき点だと思います。
住環境とは施設設備や住宅改修というハードではなく、本当はソフトですが、お年よりがどういう環境でどういう生活をしているかという情報は行政にはありません。福祉・住環境人材開発センターにそういう情報をぜひとも発信していただきたいと思います。

高齢社会のニーズに沿った専門職の育成を目指して
【渡邉】
二十数年建築系の技術者を育成してきました。そしてこの13年は高齢社会とバリアフリーな住環境をテーマに社会人教育に従事する傍ら、住宅設計・改修や福祉用具の導入など実務にもかかわってきました。これからの超高齢社会に向けて、本日の提言を大切に福祉マインドを持った質の高い専門職の育成のために実践的教育を推進していきたいと思います。



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